*1  アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き

アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き本書では基本的にアジャイルを知っていること・アジャイル開発の中で活用される事を前提として、イテレーション(アジャイルプロセスでの短期間のプロセス反復)毎の「ふりかえり」をどう行うとより良いチーム作りが出来るかを、具体的な司会進行方法やパターンを用いて説いてる。掲載されている具体的なパターンの例については小野和俊のブログの書名記事等を参考のこと。

この「ふりかえり」プロセスでは、開発者同士のノウハウ共有や進捗の管理というプロジェクトマネージメント的な面を持ちつつも、アジャイル宣言でも先頭に書かれている「プロセスやツールより人同士の相互作用を重視する」を実践しており、発言者の自己改革やチーム内感情のマネージメントといった、人間中心のチーム作りが主な内容になっている。「最初に場を設定する」と言った考え方や、発言量のコントロール、満足度の可視化、あまり発言しない人をどう動機付けするか等は、アジャイルに限らず少人数のワークグループをうまく運営するためのノウハウとしても機能すると思う。
ただそれだけに、イテレーション、リリース等のアジャイル用語に関しては、カタカナ語を使うのは仕方がないにしても初出に注訳程度は付けても良かった気がする(用語の定義はなんと124ページにようやく出てくる)。そう思うのも、この本の適用範囲はアジャイルだけじゃないと思ったからなんだけど。

ところで、そもそも何故こうした「ふりかえり」を行うのかと言うと、根底には恐らく「ある事項を真剣に考えている集団の集合知識による意思決定は、その事項に精通した優れた一人の意見より正しい場合が多い」と言う思想があるんじゃなかろうか。なので「ある事項を真剣に考えてもらう」「考えた事項をチームで共有する」「チームメンバーを信頼し、考えを尊重する」といったプロセスが重視され、それをどう「チームの合意としてプロジェクト方針に反映させる」かが鍵となる。「経営の未来」に従業員の未来を見る - アンカテでも語られているように、チームの活動を集約させて成果にするための手段としての「ふりかえり」は、この先きっと重要さを増していくんじゃないだろうか。

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