*1  技術職と一般事務職の給与を比べてみると − @IT

欧州は知らねど、私の知っている米国企業では、確かに技術・研究職の給与が社内の比較で高いゾーンにいる。但しこれは誰が価値を生み出してるかなんて言う話ではなく、単純に技術者の市場価格がそれだけ高いという話である。

米国の労働市場は御存じの通り流動性が高く、人材は市場で取り引きされる「商品」である。市場の中で商品の価値を決めるのは需要と供給だ。そして技術者は一般事務職に比べ、そもそもの供給が少ない。故にその雇用が必要ならば、必然的に高い給与を出すしかない。

では、なぜ供給が少ないのか。米国の技術職、特に開発研究をやるレイヤの人は医者や弁護士といった立場と同様、専門知識を持った専門職であり、キャリアパス的にヒエラルキーの上位にいるからだ。例えば知っている会社の(非管理職の)技術系スタッフでは概ねだが
サポート < セールス・アカウント <= QA << Developer
といった順序で給与に差があり、左側の人はキャリアパスとして右側を目指すという構造になっている(ちなみにマネージメント職はまた別のヒエラルキーであり、マネージメントという専門職である)。米国のIT市場で「技術者」と呼ばれるのはこのヒエラルキーの上位にいる人だけだろう。

これは逆に言うと、半端なレベルの技術者は、そもそもIT人材市場で「技術者」というカテゴリでは商売できない事を意味する。しかもこの「技術者」商品は知識・経験の劣化が激しく、またご存知の通りインド方面等へのアウトソースが激しい分野なので、現在「技術者」として市場に残っている商品は競争を勝ち抜いてきた、品質の良い商品が殆どと言える。

米国では大学で仕事に即役に立つ学問を修めて(もしくは独学でスキルを身につけて)いるか、さもなくばキャリアパスの下から実力で上がっていった結果として「技術者」と言う職についており、採用面接時にはスキルそのものに関する質問を受けている。対して日本の場合、「技術者」は専門でもない学校を出てすぐに「技術者」と言う立場で仕事をすることがままあり、コミュニケーションスキルだ何だと非専門領域の資質が中心になりやすい。

こうした日本型構造では、確かに本当にスキルのある一部の「技術者」は割を食うだろうが、一方でスキルがさほど無い人でも「技術者」を名乗って給料を貰えるモデルと言える。この状態で給与を職種平均したときに、日本と米国で「技術者」を一括りで比較することにはそもそも意味が無いんじゃないかな。まぁ、日本がITに金とコストをかけなさすぎと言うのは同意するんだけれども。

*1  技術だけではないITエンジニアが必要 - @IT 自分戦略研究所

この手の話はよく言われているけど、一方で技術のあるITエンジニアがどれだけいるのだろうという疑問がないでもない。エンジニアの場合はそもそも「相手が望んでいることを実現できる IT 技術を知っている・つくり出せる」ことが大前提なので、そこが無いまま他のスキルを高めてもあまり存在価値が無い。ひとつのビジネスの中ではコミュニケーションや調整スキルは非常に大切だけど、会社という組織の中であれば一人のエンジニアが全部やらなくてもいいのでは無いかとも思う。

もちろんITエンジニアが両方できるにこしたことはないし、前述の条件のうちでも「相手が望んだ」を把握するためには顧客と接する職から学べることは多い。技術力自体もそうした本質から学べるものなので、一概に否定したものでは無いのだけど、日本企業のキャリアでは上に行くほど技術が蔑ろになりがちな傾向を感じるのがどうなのかなと思わないでもない。

端的にいうと、技術力もコミュニケーションスキルも、どっちも中途半端になったらキャリア上の価値が無くなるよね、という事を言いたいだけなのだけど。

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