PalmOS 13年の歴史
Posted by yoosee on Palm at 2009-02-17 02:42 JST1 PalmOS 搭載デバイスの新規発売終了
ついにこの日が来たかという感じだが、Palm Inc. が現在のPalm OS 搭載デバイスの新規発売終了を宣言した。今後は先日発表された webOS へ専念することになる。 今後、Nokia N810 のような仮想マシン Garnet VM 上での動作はあるかもしれないが、Native な端末はこれで幕を閉じることになる。Palm Computing 創設からの歴史をまとめた10周年記事に、2006年以降の出来事を加筆した。日本では2005年2月のCLIE撤退でPalmOS端末はほぼ途絶えた形になっているが、海外、特に米国ではスマートフォン Treo や Centro がそれなりのセールスを上げている。また PDA も Tungsten, Zire, Life Drive, TX といったモデルが(これらも終焉したが)販売されていた。Pilot が発売されてから約13年間の活躍であり、PalmOS 搭載端末は 3,800万台以上販売され、28,000を越えるソフトウェアが存在しているという。
年-月 | Palm の動き | 関係他社の動き |
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1992 | ||
1992-01 | Jeff Hawkins と Donna Duversky により Palm Computing Inc. 創設 (創設当時は PDA をターゲットにしたソフトウェア会社) | |
1993 | ||
1993 | Zoomer用ソフト、Graffiti や Sync ソフトウェアの開発などに参加 | Apple が Newton, Casio が Zoomer を発売するもあまり売れず。 |
1995 | ||
1995-09 | U.S.Robotics が Palm Computing を 4400万ドルで買収 | |
1996 | ||
1996-03 | Pilot 1000 リリース。スペックは 128KB のメモリ(Pilot 5000 は 512KB) に 16MHz の CPU、160x160 4階調モノクロタッチスクリーン。シャツのポケットにはいるサイズ、PC との HotSync、Graffiti入力、高速な動作などの基本的な部分はこの時点で出来上がっている。 | |
1996-10 | 山田達司氏がJ-OS 1.0, 1.1 をリリース | |
1997 | ||
1997-03 | 2番目の製品 PalmPilot リリース | |
1997-05 | 3Com が U.S.Robotics を買収 | |
1997-09 | Palm のプロダクトが 18ヶ月で 100万台の販売を達成 | |
1998 | ||
1998-04 | Palm III 発売。Pilot → PalmPilot → Palm と名前が変遷しているのは日本の文房具メーカー「パイロット」社と商標の衝突があったため | |
1998-11 | Jeff Hawkins, Donna Duversky, Ed Collegan ら Palm Computing 創始メンバーが Handspring 社を創設 | |
1999 | ||
1999-02 | 名機 Palm V が発売され、圧倒的な支持を得る。Louis Vuitton や Hermes など高級ブランドも専用ケースを発売。1999-10 にはスペック強化した Palm Vx 発売 | IBM により日本語化された PalmIII の OEM、 WorkPad 発売。初の日本語化製品 |
1999-05 | 初のワイヤレス機能搭載 Palm VII 発売 | |
1999-09 | HandSpring が Visor を発表。外部拡張の SpringBoard 搭載が話題に | |
2000 | ||
2000-03 | 初のカラーデバイス Palm IIIc 発売 | Handspring Visor 発売。Palm を越える売上 |
2000-04 | Palm 日本法人が日本語化された Palm IIIc, PalmVx を発売開始 | |
2000-05 | Palm Inc. が IPO 。米国で最も成功した IPO の一つと言われる | |
2000-06 | HandSpring も日本語化された Visor Deluxe を発売 | |
2000-07 | Sony が同社初の PalmOS 端末、Clie PEG-S500C/S300 を発売。S500C は 256色カラー、両者ともメモリスティックスロットやジョグダイヤルを搭載 | |
2000- | この頃、Sony, IBM や Handspring 以外にも HandEra や TRG, Symbol などが PalmOS のライセンシーとしてデバイスを発売。PDA黄金期 | |
2001 | ||
2001-04 | HandSpring Visor Edge 日本語版発売 | |
2001-04 | Sony PEG-N700C 初のカラーハイレゾ(320x320)デバイス発売、オーディオ再生も搭載 | |
2001-05 | Palmware が 10,000個を突破 Palm Inc. が Be を買収 | |
2001-09 | Handspring 日本法人が国内からほぼ撤退 | |
2001-10 | Handspring が最初の PalmOS スマートフォンとなる Treo を発表 | |
2001-12 | Palm Inc. がハードウェアとソフトウェア事業をそれぞれ PalmSolutions, PalmSource に子会社化 | |
2002 | ||
2002-01 | Handspring が Visor から撤退 | |
2002-02 | PalmOS のライセンス・開発を PalmSource に分離 | Handspring が初のスマートフォン Treo 180, 180g 発売 IBM が WorkPad から撤退 |
2002-09 | Palm 日本法人が国内販売から撤退 | |
2002-10 | Palm Tungsten と Zire をリリース。Tungsten は同社初の ARM/OS5/ハイレゾデバイス。Zire は 18ヶ月で 300万台のセールスを記録 | Sony が世界初の PalmOS5 機 PEG-NX70V 発売。ARM アーキテクチャの XScale (200MHz) 搭載 |
2003 | ||
2003-06 | Tungsten T が登山家と共にエベレスト山頂に到達 | Handspring がスマートフォン Treo600 発売 |
2003-10 | Palm Inc. は HandSpring を買収し、PalmOne に改名。同時に PalmSource へ独立分社化。 | |
2004 | ||
2004-02 | PalmOS Cobalt (6.0)発表 (搭載端末は最終的に無し) | |
2004-05 | Xerox との Graffiti 訴訟に勝訴 | |
2004-06 | Sony が CLIE 海外市場からの撤退を発表 | |
2004-10 | Treo 650 スマートフォンをリリース | |
2005 | ||
2005-02 | Sony が日本国内市場からも CLIE 撤退を発表し、PalmOS から完全撤退。最後のデバイスとなったのは有機ELを搭載した PEG-VZ90 | |
2005-04 | Treo 650 が 100万台を突破 | |
2005-05 | PalmOne は PalmSource から Palm のブランド名を3,000万USDで買い取り、Palm Inc. へ改名 | |
2005-06 | HDD 搭載 Life Drive リリース | |
2005-09 | ACCESS が PalmSource を3億2400万USDで買収 | |
2005-12 | WILLCOM/SHARPが同社初のWindows Mobile5.0搭載W-ZERO3リリース | |
2006 | ||
2006-01 | 同社初の Windows Mobile 搭載端末 Treo 700w をリリース | |
2006-02 | ACCESS がGarnetVMを含むACCESS Linux Platform(ALP)を発表 | |
2006-03 | Pilot 誕生から10周年 | |
2006-10 | Softbank Mobile/HTCが同社初のWindows Mobile5.0搭載X01HTリリース | |
2006-12 | PalmがACCESSから PalmOS Garnetのソースコードライセンス(利用・改変権)を4,400万USDで購入 | |
2007 | ||
2007-01 | Apple が初のスマートフォン iPhone 発表 | |
2007-06 | 投資会社Elevation Partnersと戦略提携 | Apple が iPhone リリース Google が携帯電話用プラットフォーム Android 発表 |
2007-10 | Centroスマートフォン リリース | |
2007-11 | ACCESSがNokia Nシリーズ向けに PalmOS GarnetVM (仮想実行環境)を提供 | |
2008 | ||
2008-04 | Centro 100万台突破 | |
2008-08 | Centro 200万台突破 | |
2008-09 | Apple が 3G対応 iPhone リリース | |
2008-10 | Google Android 搭載端末 T-Mobile G1 リリース | |
2008-12 | 非スマートフォンPDAのの終焉宣言 | iPhone販売台数がWindows Mobile搭載端末の台数を抜く |
2009 | ||
2009-01 | PalmがCESにて新プラットフォームPalm webOSと搭載端末Preを発表 | |
2009-02 | 現在販売中のモデルを除くPalmOS搭載端末の終焉宣言 |
個人的な感想としては、PalmOSと端末は Palm V の時点でいったん完成してしまった。 その後は Sony と手を組んだことによってハイレゾ・カラー化やマルチメディアへの対応など進歩したのは確かだが、元々のコンセプトである Zen of Palm との乖離に苦しんでいるようにも見えた。 特に近年になってスマートフォン Treo の時代になると、ネットワーク接続を前提としていなかった PalmOS は更に矛盾を抱えるようになる。 幸いな事に近年までライバルと言えるのは Windows Mobile 程度で、Blackberry はビジネスツールという形でマーケットが違っていたのだが、ここ 1,2年は iPhone の登場と Blackberry のマーケット拡大に完全に押される形になっていた。
PalmOS の終焉にはどうしても寂しさを感じてしまうものの、ここで今までのPCを母艦とするPalmOS からインターネットを母艦としたwebOSへシフトするのは正解だろう。Palm と言うモバイル向けのハードウェアとソフトウェアを一括供給する事でモバイルのユーザ体験を提供する能力を持つ稀有な企業が、この先の10年をまたリードする会社となることを祈りたい。
参考サイト: