*1  英語業務メールの主な構造と特徴

仕事柄、日本からのメールに目を通す事が多いのだが、現地社員や関連会社への依頼がうまく通じずに苦労しているのを見たりフォローせざるを得なくなったりすることが少なくない。英語能力自体の問題や仕事の理解の問題などについては上達してもらうしか無いのだが、仕事のやり取りの流儀的な所で引っかかっている人もしばしば見かける。その辺を踏まえ、英語で仕事をする人向けに英語の依頼メールを書くコツを少しまとめてみた。なにかしらの参考になれば幸いだ。

メールの構造

メールの主題・依頼内容は、理由は後述するが1通のメールに1つに絞る。メールの構成は概ね以下のようなものになる。
  1. Subjectに特定しやすく分かりやすい主題を記載
  2. 宛先の名前と挨拶 (Hello Mr. Yoosee ...)
  3. メール本文冒頭に依頼内容の要旨や求める期日を3行以内程度で記載
  4. 要旨についてのより明確な求めるもの(ゴール)、及びその背景の説明
  5. 更に細かい補足説明やデータ等の記載
  6. 最後に「質問やコメントがあればご連絡下さい (Please let me know if you have any questions or comments)」などの定型文。メールが長くなった場合は最初に書いた要旨を繰り返してもいい。
ルールとして項目立てしてみよう。

1通のメールに書く主題・依頼内容は1つだけにする
1通のメールに書く内容は1つに絞る。 複数の依頼事項を1通のメールに書くと、かなり高い確率で2つ目以降の話に返信がもらえない。これは悪意があったり意図的に手を抜いているわけではなく、最初に書いてある内容を依頼事項と認識するのが通例なため、その項目に返事を書いた時点で完了!と返信してしまうのだろう。理由はさておき、複数のお願いを1通のメールに書いても、特に後半に行くほど返答に含まれない可能性は実際に高い。確実に返事がほしい場合には特に気をつける必要がある。

どうしても複数の話題を扱いたい、例えば複数の質問を一度にしたい場合などは、「以下の質問に答えてほしい」という依頼にして質問を箇条書きにしたり、「添付した質問票を埋めて欲しい」のような依頼にしてExcelかなにかで表を作って依頼すると、まだ返答を貰える確率が高くなる。 但しそもそもメールで大量の依頼事項を送りつけること自体が相手の都合を考えていないやり方なので、あまり依頼が膨らむようであれば打合せなどを設定して仕切りなおすなり仕事の仕方を見直すのが望ましい場合も多い。

Subject には依頼の Subject (主題・目的) を記載する
上記のルールを守ればそのメールには1つだけの明確な主題・目的があるはずなので、それをきちんとSubjectに書く。本文を読まずともリストに並んだSubjectでメールの内容が想像でき、後から検索もできるように特定が効く記載が望ましい。「Question」や「About trouble」や「Please follow up!」などではなく、例えば「Schedule change request for next Wednesday sales meeting」や「Detail of ticket BUG019872 - Edit link not shown」のようにある程度具体的に記載する。 まして「Hello!」だけでは今時 spam と間違えられて届かなくてもおかしくないので気をつけること。

最初の3行以内に要旨をまとめる
実際にどういった内容のメールなのか、なにを期待しているのか。依頼なのか通知や情報提供なのか質問なのか。分かりやすい Subject を付けたら、次は依頼内容も分かりやすく最大でもせいぜい 3行以内で記載する。日本語だと色々と説明を記載して都度その後に依頼を複数書いていく形もあるだろうが、英語のメールでは普通要旨を最初に記載する。読む側はそれを期待しているので、細かい説明から長々とやられると読み続ける気が無くなってしまうし依頼も読み落としがちになる。

例えば「定期メンテナンスの予定があるのでお知らせします」「このメールに記載の内容が間違ってないか確認して連絡を下さい」「下記の質問に明日までに回答が欲しいです」「バグが見つかっているのでそちらでの再現と修正案、修正予定日を教えて頂けますか」など端的な要件を最初に記載し、その詳細を後半に書いていくのがよくあるパターンになる。こうしておくと依頼内容がすぐ目に入るので相手もメールをくまなく読んで探す必要がない。

必要な物には「なる早」ではなく期日を指定する
期限のある依頼には基本的に期日を指定する。特に日本からの依頼で ASAP / as soon as possible を使っているのをよく見るが、急いで欲しいという意向は伝わるが多分日本の多くの人が想像するほど「至急」のニュアンスはない。同義だと as soon as you can や at your earliest convenience などで書き換えると思うが、つまり「あなたの都合のつく限り早急に」くらいの意味になる。本当に急ぎの場合はきちんと by tomorrow afternoon や by morning April 5th のように日時をきちんと指定すること。また時間まで指定する際には時差を考慮し、両方の日時を by 9am Tuesday JST / 8pm Monday EDT などのように併記するのも良い手だ。
それ以上の急ぎ、例えば数時間以内にやって欲しいという場合なら、Please address immediately and I expect it to be done by 4pm at the latest など指定した上で電話などのリアルタイムのコミュニケーション手段をきちんと使う。メールだけで「今すぐに!」と言われても相手だって読んだ時点からしかアクションが取れないのは当たり前のことだ。

依頼の「ゴール」は具体的に設定する
依頼によってなにをして欲しいのかの「ゴール」は詳しく、具体的に記載する。よく見かけるのが何かの問題や障害発生時に Please fix it だけ言ってくるパターンで、fix の定義がわからないと「こちらではちゃんと動いているようにみえるよ」「こっちで直したから動いているはずだよ」のような返答をもらって見てみると直っていない、なんて事が本当によくある。例えば「アカウントID abcdef でこのページからこうログインしようとしたのだがこうしたエラーになる。ログイン出来るようにして欲しい」など、ある程度明確に書く。 また問題解決だけでなく問題の理由も聞きたい場合はきちんとそのように依頼しない限り、「直したよ」以上の情報は出てこないと思ったほうがいい。して欲しいことは漏れ無く、優先順位をつけ、明確に記載すること。

依頼の背景はより高いレベルから説明する
上記「ゴール」に併せ、可能な限り、なぜこの依頼をしているのか、なぜこの質問を聞いているのか、その理由や背景を説明する。 典型的なケースとして、特にエンジニア同士のメールで「このアプリのこの設定パラメータをこう変えたいが問題ないか」というだけの質問が来たりすることがままある。 これに素直に「その設定でも動作は問題ない」と返すと、その後に「その設定ではうまくいかなかった。今度はこの設定を試そうと思うが問題ないか」などと続いたりする。

本来こういう依頼は「こういった目的でアプリの設定を変更することで、こうした挙動を期待している。ついてはこの設定パラメータをこうしようと思うが問題ないか」などまで書けば、聞かれた方も「いやそういう目的であればそこではなく違うパラメータを変更するべきだ」「その目的を達するならむしろ別のアプリで挙動を変更したほうがうまくいく可能性が高い」など、より踏み込んだ返答ができる可能性が高まるし、なんにせよ聞かれる方も「相手も理由があって聞いてきているのだ」「相手はこういう事を目指して仕事をしているのだ」という理解があったほうが仕事のやりがいも増すというものである。 背景は横着しないできちんと書こう。結果として早くて適切なコミュニケーションが取れる。

こうしたメールの構造や書き方を意識して書いていくと、作法としてだんだん慣れて楽に書けるようになると思う。是非お試し頂きたい。

おまけ: ちょっとしたテクニック
  • 依頼の際に謝らない: 日本語で「すみませんが」などと書くものの直訳的な意味合いなのだろうが、つい無理を聞いてもらおうという時に I'm sorry but などで始めてしまう人がいる。 これをやられると読む方は「私は謝られるようなことを依頼されているのか?」とあまりいい気分ではないらしい。基本はストレートに感謝する、例えば I appreciate if you can ... や Any of your support would be most appreciated ... 等である。
  • 箇条書きや表を活用する: 英語圏の人、特にアメリカ人は文章での説明を好む傾向があるようで、メールなどでも説明が込み入ってくると切れ目のない5,6行にも渡る長々とした文章を書いてくることが少なくない。英語が達者でない身には結構辛いので、こちらが書く場合は箇条書き (bullet item) が役に立つことが多い。特に英文に慣れないうちは無理をせず、平坦な英語を箇条書するのが誤解なく意図を伝える早道だ。

*1  英会話の3つのルール: 大きな声で、ゆっくりと、リズムにのって

今回はちょっと趣向を変えて、英語を話すときに意識してほしい3つのルールをあげてみたい。ルールといっても極めて単純なもので、以下の3つだ。
  • 大きな声で
  • ゆっくりと
  • リズムにのって
特に声の通りにくい電話会議ではこの3つはとても重要だ。正直 R と L の発音なんてどうでもいい。とにかくこの3つは常に意識して話をしてみてほしい。さて、なぜこれが英会話で大事かというのはこんな理由だ。

大きな声で
英語での打ち合わせ、特に電話会議で、とにかく声が小さい日本人が多いように感じる。もしかしたら英語を話すことの気恥ずかしさ等があるのかもしれないが、小さい声では正しい発音だの正しい文法だの言う以前に、まず聞き取れない。むしろ自分で大声を出しすぎかと思うくらいに声を張って話してもらうくらいでも概ねちょうどいい。
ゆっくりと
特にエンジニアに多い気がするが、興奮してくると英語ででもどんどん早口になってくる人をそれなりに見かける。早口で話すと単語の繋ぎがおかしくなってますます通じない発音になりがちだし、ゆっくり話した方が英単語を連想・連鎖的に頭からひねり出すのにも余裕が出て、自分の英語能力をフルに使うのが楽になる、と思う。 発音なんて日本語発音英語で構わない。ゆっくりはっきりと話そう。

またこちら側が、相手も意識できるくらいにゆっくり話すことで、早口になりがちなネイティブ英語話者のスピードもコントロールすることが出来る事も多い。体験から言えば Please speak slowly などと頼むよりもよほど効果的である。
リズムにのって
英語っぽく話すのが恥ずかしいからなのか日本語の癖なのか、まったく抑揚を付けずに一本調子で話す人が多いように思うのだが、これは日本人が想像する以上に英会話として聞きづらい。そもそもむしろ英会話では、全ての話した単語を聞いているというよりは、抑揚がついて強調されたところが耳に入って意味をとると言うのが標準的じゃないかと思う。
一般的には動詞や固有名詞、つまり会話においてそれが無いと意味をなさない部分のみが強調され、冠詞や前置詞や助動詞などは軽く流される。この際、スリービートやフォービートと言った感じで声に抑揚がつくのが一般的な英語の会話になる。

前述の「大きな声で」「ゆっくりと」も、実はこのリズムに乗ってを作るのに役立つ。 声が小さくてはそもそも抑揚を付けようがないし、早口になるとえてして一本調子になりがちだ。この3つを合わせることで、それなりに聞きやすい英語を話せるはずだ。

英会話のリズムについて詳しくは、例によって日向清人のビジネス英語雑記帳 英語は「ウーン・パッ」「ウーン・パッ」で話す (上)(下) を参照されたし。
以上のように3つほど頭に置いてほしいルールを書いたが、最大のルールはもちろん「ためらわないこと」だ。そもそも英語圏に知り合いがいたり英語圏を旅したりすれば分かるだろうが、彼らは得意気に「少し日本語を話せる」と言って、実際「こ(ん)にちわ」くらいしか言えなかったりする。単純比較すれば、日本人で Hello が言えない人がいるだろうか。この基準で考えれば殆どの日本人は英語が話せるのである。
標準的な日本人が知っている英単語は恐らく本人の想像以上に多い。単語を並べるだけでもそれなりに通じるのだから、ためらう必要はない。特にエンジニアは「技術」と言う共通語を話せる分だけ難易度は更に低いと思って、あまりためらわず、この3つのルールを頭においてにトライしていただきたい。

*1  よく使う英語フレーズそのさん - Could you say it again?

三回目のフレーズは
Could you say it again?
意味はそのまま「もう一度言ってくれませんか」。

日本の授業でだと Pardon? を教わることが多いと思うが、米国だと通じるがあまり使われない。むしろ普通にI'm sorry? や Excuse me? が使われるし、より明確に聞き直す場合、この Can you say it again? がよく使われる。

印象的には、対面での会話だと sorry? のように省略もして軽く聞き、電話会議など相手からこちらが見えない場合に Could you say it again? と明確にお願いすることが多いように思う。また I couldn't catch your last words. のように「最後のところよく聞こえなかったんだけど」などの前置きを入れることも多い。

逆にちゃんと聞けてますか、理解してますか、といった確認には Do you know what I mean? がよく使われる。直訳するとなんだか失礼なもの言いに聞こえるのだが、基本的には決まり文句なのだろう。他だと Are you with me? や、納得いったかどうかを聞く場合は以前にも出した Does it make sense? は常套句としてよく使われる。

*1  よく使う英語フレーズそのに - on the same page

こう言うのはあまり懲りずに続けよう。二回目のフレーズは
on the same page
直訳すれば「同じページにいる」となるが、意味としては「共通の理解にある」「同じ見地に立っている」といったところ。プロジェクトの立ち上げ時期などに意識合わせなどをすると頻繁に出てくる。
  • Could you talk more details for all of us to be on the same page?
  • Let me talk about background of that project so that we can be on the same page.
  • I believe we're on the same page.
日本語でも、多分「最初にちょっと意識合わせさせてください」とか「認識合わせのために最初に背景を説明して頂いてもいいですか?」といったやりとりはよくあると思うが、そういった使い方に近しい。

仕事で頻繁に ... be on the same page が出るようだと、皆の立ち位置が定まってない事の裏返しな可能性があるのでご用心。

*1  よく使う英語フレーズそのいち - make sense

米国で働いて丸2年、海外在住ブロガーが一度は通る道と言われる英語記事を我も書いてみんとす。日によっては英語で1日中議論したりする仕事ではあるが、現場で「通じればいいや」と使っている英語なので、間違いがあればご指摘は歓迎である。正しい英語を知りたい人は日向清人のビジネス英語雑記帳を見るなり、CD付 即戦力がつくビジネス英会話―基本から応用までの購入をお勧めする。もうほんとに。

などと予防線を張ったくらいにして一回目は、こちらでとてもよく使われるのに日本ではあまり聞かない単語
make sense
を紹介。完全にしっくりくる日本語が思い当たらないが、強いて言えば「ガッテン!」が一番しっくりくる。「理解する」と言うよりは「腑に落ちる」と言う感じの言い回しだ。

使われ方としては例えば
  • 「納得できる?」Does it make sense?
  • 「なるほど、それだと筋が通るね」 That makes a lot of sense.
  • 「そっちのほうがしっくりくるね」 It does more make sense.
  • 「それは全く合点がいかないよ」 It doesn't make any sense.
  • 「この方がいい?」 Will it make sense?
といった具合に、同意を示すとき、同意を確認する時にかなり万能に使われる。 メールなど書き言葉だとあまり見かけないが、会話では本当によく使うもので、英語で1日話していて聞かないことはまずない。強調するのに really とか truly とか色々とつけたり、下手すると make-sensable とかよく分からない新単語が出てきたりと文法上おかしな感じになったりするのでたまに聞き逃すかも。

ということで使う方も正しさとか気にせずに「あー、ガッテンガッテン」と言う感じで気軽に使うのがよろしいかと。さあ君も一緒に let's make sense!

About W.W.Walker

World Wide Walker は yoosee による blog です。PDA, Web・サーバ技術, 美味しい食べ物などの話題を取り上げています... read more

Monthly Archives

Select Month to read
  

Ads

Recent Entries

Related Sites