*1  Palm からノートPC型の新デバイス Foleo 発表

Palm Foleo mobile companion書き下ろし掲載。セクションローカルかつ Palm ネタにしてはコメントが多めについたが、単にノートPC型のフォームファクタであるところが注目を集めたんだろう。

このデバイス、スラドのコメントを見た感じでも、どうしても廉価版ノートPCと見られそうなプロダクトだが、Palm もアナウンスしているようにコンセプトはそこではない。実は新しい市場を目指した、かなりチャレンジングなプロダクトであると言える。

*2  あなたのモバイルノートPCは本当にモバイル向きなのかという問い

普通のいわゆるモバイルノートPCを持っている人で、実際にそれを街角で「モバイル」している人は、実はとても少ないんじゃなかろうか。例えばメールを読むにしても、ノートPCを取り出して電源を入れてしばらく待ち、通信環境を選択して接続し、メールを取得してみるに必要なメールが無ければノートPCを閉じてまたしばらく経ってからやりなおし、なんてことをしている人はどれくらいいるだろう。

一方で Foleo のコンセプトでは、スマートフォンにメールが着信した時点でメールの概要を読み、量が多い場合や凝った返答・添付ファイルが必要な場合に Foleo を開いて同期ボタンを押せば、開いた時点からおそらく 30秒以内には返信を書く準備が出来る。つまりは最近台数が増えつつあるスマートフォンの不満を解消し、「本当にモバイルで使う」ことを目指したデバイスなのだろう。

*3  Foleo には Palm の DNA が引き継がれている

ノートPC形状の Foleo には「Palmらしくない」と言うコメントもあるようだ。 しかし Foleo は実は、とても Palm らしい製品なのだ。と言うのも Foleo は、 当初の Palm Pilot が持っていた 2 つのコンセプトをそのまま引き継いでいるからだ。ひとつは「よく使う機能へのシンプルなアクセス」で、もうひとつは「役割分担」である。

PalmOS デバイス ではよく使う機能、例えば予定表へのアクセスには専用のボタンが用意されており、これを押せば数秒以内に必要な画面を開くことが出来た。 これと同じように、Foleo ではボタンひとつでスマートフォンとのペアリングからメール同期までが行える専用のボタンが用意されている。従来の HotSync に似たこの機能は、先述の「モバイル」を本気でやるのなら欠かせないものだろうし、Palm の基本思想をそのまま受けついたものといえる。

もうひとつの「役割分担」。Palm では長らく Palm デバイスと同期させる「母艦」と呼ばれる PC があるのが普通だった。長い文字入力やデータの整理、データの取得や変換はリソースや UI が充実している PC 側で行い、Palm 側ではシンプルな操作を前提とすることで、数MHzという低クロックで通信機能も無い Palm 本体でも、快適に利用できる仕組みになっていた。役割分担したデバイス同士を HotSync という同期処理で結ぶことで、PC と Palm デバイスの互いの長所を使うことが出来たわけだ。

一方で現在、スマートフォンの普及と高性能化により、PC に頼らずとも携帯端末のみで用事を済ませられることが多くなっており、スタンドアロンで利用される場合の方がむしろ多いだろう。 こうしたスマートフォンでは MS Office のファイルを閲覧・編集したりメールを書いたりと言ったことも出来るが、ある事が「可能」なのと「快適」であることの間には大きな隔たりがあるものだ。

ここで Palm は「母艦と携帯デバイス」といった従来の主従を逆転させた。つまり Foleo は、今まで「母艦」PC が担っていた「主」側では無く、スマートフォンをサポートする端末として「従」の役割を担うことになる。その意味で、Foleo は廉価版ノートPCとは用意されたそもそもの役割が異なるデバイスとして生を受けているわけなのだ。

*4  Foleo はモバイルビジネスとして成功するだろうか

こうしたコンセプトを先行させた「使いかたの提案」は、とても Palm らしいやり方なのだけど、当然ながらこの「使いかた」を理解してもらわなければならないと言う壁と、そうした「使いかた」が求められる市場があるかどうかという壁があり、うまくはまらないとなかなか売れないと言うリスクもある。
特に形状がノートPCである以上、ユーザはこのデバイスをノートPCをベースにとらえるだろうし、それがこの製品の本質を隠してしまうことは充分に考えられる。

一方で製品の形状上、結果として「廉価版ノートPC」と言う市場にも結果としてリーチするだろうし、Thin Client として企業にアピールするといった、本来のコンセプトからすると傍流にはなる市場にもリーチする可能性はあるかもしれない。

どちらにしてもこのデバイスの場合、数字を並べたスペックよりも実際のユーザ・エクスペリエンスというやつが重要であろう事は間違いない。そういった意味では売れるとしても実際に製品が出た後に口コミで人気が出る、と言うパターンになるのではなかろうか。

個人的には 1.1kg は持ち歩くにはやはり重いと言わざるを得ないし、そもそも現在の仕事としてモバイルで長文メールを書いたり添付ファイルをいじったりする必要も無いのだが、写真で見るシンプルなデザインは微妙に DEC HiNote を彷彿とさせ、また実際にさわってみないと評価できないデバイスであろうから、実物は是非見てみたいと思っている次第である。

( Permalink | Comments (3) | tags: palm  )
[ジェフ・ホーキンズ氏の生涯最高のアイデア - CNET Japan] 以前の私の記事 Palm の新デバイス Foleo は、とても Palm らしいデバイスだ では「これまでの役割を逆転させた、Treo を母艦とする Foleo」と言う趣旨の事を書いたが、ジェフ・ホーキンズに言わせると、それはあくまで「最初の数十万台を売るための入口」にすぎないようだ.....
Comments
1. 28インチHDブラウン管 at 2007-07-18 15:57
この気合いの入ったエントリーにコメントしようと思って、ついしそびれてしまって、激遅コメントですがすみません。

私もすぐに、なぜ重量1kgを切らないんだっっ!!!と思いましたが、yooseeさん同様、これは廉価版ノートPCではないんだと思いました。とはいえ、
>>「本当にモバイルで使う」ことを目指したデバイス
というのは疑問です。「本当にモバイルで使う」ことを志向するユーザーにはかなり中途半端な気がしますし、モバイルノートを持ってれば完全にかぶってしまいます。

個人的にはかつてのワープロ的なものというか、自宅でパソコンを使わないユーザー向きではないかと思います。
まったく不思議なことに、いまだにWindowsMeやMacOS9を使っている人が私の周りにいるんですが、彼らは会社にPCあるからいらないと言うんですね。メールとたまに旅行の予約ができる程度でいいと。
それはアメリカでも同様で、自宅でちょっとしたブラウジングとメールチェックだけできればいいというような人たちが、実は大勢いるのではないかと。そこをFoleoが狙っていてもおかしくない。彼らは会社でPCを使っていたり、初心者でもなくPCから乗り替えるので、トラックポイントのようなインターフェースでもいい。
かといってFoleoがヘビーユーザーを狙っていないかというとそうでもなくて、ノートPCを持っているけど、多忙な時期や出張中に使うだけの人って結構いますよね。そういう人にとって、前にノートPCに20万円出したけど、こんどは6万だしFoleoでいいかと思わせるのに十分な性能がある。そう考えると売れそうな気もしてきて、iPhoneよりTreo+Foleoのほうがクレバーな感じまでしてくる (^o^)

日本では携帯からしかネットを見ない人が、意外と多いという話をブログで読んだりすると、そのうち同様なデバイスが出るんじゃないかと思ったりします。esではないW-Zero3の後継が、もっと大きくなるという話もありますし・・・
あとLinuxを搭載しているということで、非WindowsPCの流れというのも注目ですよね。もしかしたら10年後のPCはこれが主流で、Windowsの遺産はエミュでなんて想像したり。業務用でWindowsが死ぬことはないでしょうが。
あとFoleoがちょっとでも売れたら、アップルがすぐ追従するでしょうね。iFiloなんつってiPhoneのOSを拡張したりして。
とにかく実物が見てみたいデバイスですね。

>>DEC HiNote を彷彿とさせ、
私にはMacintosh Duoの再来としか見えません(T_T)
絶妙なアールの処理、グレーのプラスチック素材、シンプルなデザイン!!
細かい議論抜きに、日本語版が欲しくて仕方がないのですが、その前にまずTreoを持ってこいと言うのが先か・・・orz
2. yoosee at 2007-07-24 00:14
28インチHDブラウン管さん。返事が遅くなりましたが Foleo のエントリーにコメントを貰えるなんてだけでも嬉しい今日この頃です。そのうえ熱の入った考察ありがとうございます。

> モバイルノートを持ってれば完全にかぶってしまいます。

米国だと日本のような1kg前後のモバイルノートPCはかなりマイナーなんですよね。その一方でビジネスパーソンの間では Blackberry や Treo のようなメール機能を中心に置いた端末が高い普及率ですから、その補助デバイスと言う立ち上げ方は結構ありな気がしています。

日本でもいわゆるモバイルノートPCは概ね20万円以上と高価な上に性能的制約も受けますから、15万以下で持ち歩きには向かないけど高性能なラップトップ(ないしデスクトップ)と、Foleoのような機能は限られているけどモバイルで使うだけなら必要十分なデバイスと言う組み合わせもありだと思います。まぁ日本で売るなら800g以下くらいになってくれないと厳しそうですけど。

ただおっしゃるような「自宅でパソコンを使わないユーザー向き」と言うターゲティングは確かにあると思います。Trackback先の記事で引用してますが、ジェフ・ホーキンズも「わたしはずっと、もっといいパーソナルコンピュータを作ろうとしてきました。」とコメントしていますから、最終的に目指すターゲットはむしろそっちなんでしょうね。

> 私にはMacintosh Duoの再来としか見えません(T_T)

あああそっちがあったか。あのシンプルに徹したデザインは魅力を感じますねぇ。実物を見てみたいし Treo を先にという所も同感...
3. 28インチHDブラウン管 at 2007-07-25 07:40
すいません、トラックバック先みましたら、ほとんど同じこと書いてありました(^^;
Linuxに関するジェフ・ホーキンズのコメントは夢があっていい!
>>サーバのコードを書くのにうんざりしています。彼らはみな何かもっと一般利用者向けのものを探しています。

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