*1  「知の創出」のコモディティ化への戸惑い

梅田氏の「勉強能力と村の中での対人能力だけでは仕事にならなくなる。これからのハッカーには表に向いた対人能力や人間観察能力が大切」と言う記事。微妙に言葉遊びになりそうで危うい気配もするが、書いてあることは興味深い。折しも プログラミングはもう輝かしい仕事ではない? - ITMedia なんて言う記事もある。とは言え個人的には「学ぶ内容は確かに変わっていくけど、対人能力は今までと同様で必要な能力のひとつに過ぎないんじゃないのかな」と思うわけだが。

*2  「勉強」自体の質の変化

ここでの「勉強好きなだけではこの先食っていけなくなる」と言うのは恐らく、「勉強によって得られるレベルのスキルはこの先 Google なり OpenSource なりで容易に入手できるようになり、差別要因にならなくなる」と言うのが前提条件なのだと思う。
しかし世を見れば、公開されている情報だからと言って誰もが知っているとは限らず、情報自体も正しい保証はない。公知の既存技術だからと言ってビジネスにそのまま使えるとも限らない。この部分は、今まで以上に「勉強能力」を必要とする部分だろう。

一方でこの「勉強能力」は、今までの「社内でのみ通用するノウハウを回していれば仕事になった」と言うモノとは違った性格を帯びそうなのは確かだ。つまり今までは「ノウハウを内に溜めておけばそれが人・会社の差別要因として有益に利用できた(知の隠匿が企業力になった)」のだが、これからは「公開された外側にあるノウハウをうまく利用して仕事ができる人」が必要になってくると言うことではなかろうか。
言い換えれば、これからは「(実はありふれた)知の創出能力」よりも「知の利用能力」の方が大事になると言う事で、つまりこれは「車輪はもう充分に生産されている。後はパーツを集めて車を作る人が必要」と言う事かもしれない。業種によって事情はかなり違いそうだが。

そう言う状況化では当然ながら、「知を広める」「知を実践する」と言うアクションが必要になり、これを業務でやるためには「営業力」「対人対応力」が必要になるだろう。但しそれらの技術は、(単体でも役に立つものであるとは言え)あくまで前半部の「知の利用能力」があってこそ生かせる能力になるとも言える。

*3  ハッカーと人間

梅田氏・Ringo氏の文章での「ハッカー」は「コンピュータと人間の達人」と言う定義になっているが、両者を高いレベルで持ち合わせるのはかなり困難じゃなかろうか。両方とも中途半端で終るくらいならば、どちらかに特化したハイレベルな能力を持っていた方が面白い人材になる気がする。日本のいわゆる大企業だと出世し難そうだし、技術者はもっと皆を説得できる言葉で喋るべきだとも思うし、ビジネスとITの融合は「技術屋」にしかできないこと なんてのを読むと共感したりもするんだけど。

*4  余談1 - 人間に優しいコンピュータ

ハッカーは人間じゃなく計算機に優しいのはまぁ当然で、計算機に優しいと言うよりはプログラマに優しいわけで、人間に優しいものを作るにはそう言う強いモチベーションがないと自然にそうなるのではないかと。人間とプログラマ両方に優しいプログラミング言語(意味不明)があればいいのかな。

*5  余談2 - 能力と劣化

個人的には「対人能力」も経年劣化するものだと思う。正確に言えば、表面的な対人能力や表面的なプログラム技術は劣化しやすい(後者の方が劣化速度は著しい)が、根本的理解をしている場合にはどちらも劣化速度はかなり遅くなるんじゃないかと。

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