*1  W-ZERO3[es] に QWERTY キーボードは必要だったのか

es に関し、幾つかの記事や blog で「QWERTYキーボードは無くても良かったから更に薄く or バッテリーを大きくして欲しかった」と言う主張を見掛けた。個人的にはそのまま同感するものなのだが、現実には難しかったのではないかと思う。

と言うのも es の場合、W-ZERO3 のようなあからさまな「PDAの延長線上」にあるスマートフォンではなく、携帯電話のフォームファクタをある程度模している。ここでQWERTYキーボードを外すと、携帯電話とのハードウェア的な優位点はタッチパネル液晶を除き、ほぼ無くなってしまう。これは差別化と言う意味ではかなり不利だ。

日本市場の場合、携帯電話自体が相当な高機能化を果たしてしまった結果、PDA との線引きが難しくなっている。ソフトウェア面から見た場合
  1. Web閲覧・メール機能
  2. PIM (スケジューラ・アドレス帳) 機能
  3. マルチメディア(音楽・動画)の再生機能
  4. オフィスファイル(MS Office, PDF)の閲覧
  5. アプリケーションの実行機能(特にゲーム)
と言った部分は携帯電話でも通り一遍には実装されている。もちろん使い勝手や自由度、カスタマイズ性の高さ等、多くの面で PDA・スマートフォンは携帯電話よりも優位に立てるのだが、そうした使わないと分からない体感的な差違は普通の人へのアピールにはなりにくい。そう考えた場合、携帯電話とスマートフォンを分ける大きな分岐点はハードウェアであり、特に「大きな液晶」と「入力インターフェイス」だろう。es では前者を放棄しているため、後者で差別化するには QWERTYキーボードを外せなかったのではなかろうか。

スマートフォンがもう少し一般化し、「ソフトウェア面での拡張性」と言う部分の認知が進んだ後ならばハードウェアでの差別化を強く主張しない端末もリリースされる可能性が高まるのではあるまいか。しかし現時点での日本市場でのスマートフォンには分かりやすい「QWERTYキーボード」と言う記号が必要だったのではないかと言える。
過去にPDAとして売れた経緯があるCLIEフォンならもしかしたら... いや、有り得ない話はしないでおこう。

余談になるが es の場合、USBホストによる「ハードウェアの機能拡張」と言う新しい視点を持ち込んだことを高く評価したい。が、実際には SpringBoard のようにならないかという心配もある。USBと言う一般規格を使っている時点で事情がかなり違うものの、ここが優位に働くかどうかはしばらく推移を見守りたい。

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