Kindle サービスの日本提供が始まったことについての雑感
Posted by yoosee on Gadget at 2012-10-30 10:52 JST1 Kindle サービスの日本提供が始まったのであれこれ
KindleがようやくAmazon.co.jpでも展開されたということで、以下かなり雑多な感想。コンテンツの品揃えと価格
Kindleストアの品揃えは最初ならこれくらいあれば失望はしなくていいなという感じだし、きちんとコミックが相当数(約14,000?) 含まれているのがいい。ジャンプコミックスで 10-20% 程度の値引きのようだが、物によってはプロモーションとしての値引きだろうが、テルマエの1巻やのだめの1巻のように70%以上のものもあるようだ。他の電子書籍ストアに比べて取り立てて品揃えが素晴らしいとまでは行っていないので、そこは今後の伸びも期待したいところ。Koboのことは言うな。
米国からの日本Amazon Kindleショップの利用とAmazon.com と Amazon.co.jp の使い分け
米国からUSキャリアのAndoridスマートフォンでも、Localeを日本語にして Kindle アプリのストアへの接続からやり直せば日本のショップに接続されて日本語書籍を購入することが出来る。もちろんこの場合、Amazon.co.jpへの登録居住地が日本であり、また恐らくだがクレジットカードの登録住所も日本になっている必要がありそうだが、少なくともIPアドレスなどでの制限は米国からは無い様子。
既存のUS Kindleユーザはアカウント統合するとコンテンツ引継ぎができるらしいが、それをやると選択した国でしか買い物ができなくなるらしいので、Amazon.com もアクティブに使っている場合は Amazon JP 向けの端末を別途用意するのがよさそうだ。統合後も両方の国で購入できたという話もあるようだけど、これがAmazonの意図した動きなのか後から塞がれる穴なのかは分からない。 上記アプリでの対応もLocaleをEN-USに戻すと日本で購入した本は見ることが出来なくなってしまうため、現実的にUSとJPを使い分けるには複数端末を用意する事になるだろう。
スマートフォン・タブレット以外のKindle アプリ
Amazon JP では iPhone & iPod touch, iPad 及び Android 向けにアプリが提供されているが、Amazon USではこれに加えて Windows Phone や BrackBerry はともかく、Windows XP/7/8, Mac 及び Chrome/Firefox/Safari といった各種PC、ブラウザ向けにも対応アプリが存在する。特にブラウザでの対応はAmazonショップからサンプルを読むのがブラウザ上で完結して数秒も待つ必要がないのは大きな利点なので是非対応して欲しいところ。ただ現時点での対応がないのはもしかすると日本の出版社とのDRM管理上の都合な可能性も考えられ、その場合は将来的にも対応が難しいかもしれない。そうでないことを祈りたい。
Kindle Paperwhite について
Kindle Paperwhite は比較的高い解像度と視野性、バックライトなどを考えれば価格性能比の高いよい e-ink リーダといえる。 特に日本の場合、USでは広告付きディスカウントモデルが $119 (1ドル80円レートで9,520円) 、広告なしモデルが $139 (同11,120円) なことを考えると、8,480円はAmazon JPの本気を感じるお買い得な値段である。
なおこれも何度も書いているけど、e-ink の読みやすさ以外にも iPad や Android じゃない専用端末を使う利点の一つは基本的に読書以外になにもできないことである。Kindle Fireでも読書はしたりするけど、メールだのSNSだのの通知が来るとどうしても気が散って没頭できない、のは個人的問題かもしれないが周りでも比較的よく聞く話でもある。
ちなみに3Gモデルはどこからでもストアへアクセスできるのは便利だし、特に複数デバイスで同じ本を並行して読み進める人には既読ページの同期が出来るのは嬉しいと思うが、古い3Gモデルを使っている身としては通信をONにしているだけで電池を食うので基本的にはOFFにしている。通信がなければ2,3週間は平気でもつ端末も通信をOnにしていると1週間も持たなくなる。Wi-Fiでも事情は同じではあるし、新モデルでは改善されているのかもしれないが、そういう理由で個人的にはそこまで3Gはいいかなあ、という気分である。
Kindle Fire, Fire HD について
日本では基本的に買う必要はない。Amazon USではFireは基本的にAmazon Prime会員に開放された映像コンテンツ用のデバイスなので、そうしたサービスが未提供の日本で買う理由は値段以外に殆ど無い。Kindle Fireは標準ではAndroid Marketへのアクセスもないため、通常のAndroid Tabletとして使うのであれば多少高くはなるが Nexus 7 を選んだ方がハードウェア的にもAndroidとしての使い勝手としても良いだろう。もちろん Nexus 7 でも Kindle や Amazon MP3 を使ってほぼ同等のサービスが利用できる (Primeユーザ向け動画サービスはFireのみでの提供だが、前述のように日本では未提供である)。
ただ現時点でそうしたコスト回収の機会がないAmazon JPがこの端末をこの値段で出してきたというのは、近い将来にそうしたサービスを出すことを想定してGoogleやAppleにシェアを取られる前に勝負をかけてきている、という可能性はあるかも。ま、その時はその時に買えばいいじゃない。
Kindleコミック
試しに1冊買ったばかりなのであまりちゃんとした考察にならないが、1ファイルが約60MB程度あったので200ページ程度と推定すると1ページ300KB程度、グレースケールが主なJpegファイルを想定して手元の自炊したファイルと比較すると1300x2000程度の解像度があるんじゃないかと思う。このサイズだとRetina iPadで1ページ1画面表示するケース以外は十分な解像度になるんじゃなかろうか。 ただ気になるのはコマの周りの白枠。もしかしたら漫画によってはもっとマシなのかもしれないが、コマの周りにかなり大きめにスペースが入る上にサイズ調整ができないのは結構厄介だし、自炊ファイル + PerfectViewer に比べると見劣りしてしまうのが残念。これはアプリ側でもコンテンツ側でもどちらでもいいので改善して欲しい。
My Kindle / Manage Kindle のインターフェイス
My Kindle のインターフェイスのいけてなさは残念ながら日本リリースを経ても全く変わるところがないようだ。これは特に、日本のように Kindle コミックといった「同じタイトルの続編が数十冊連なる」ようなケースでは恐らくかなり問題になる。せめてフォルダやタグ付け、チェックボックスでのまとめ処理への対応くらいは欲しい。購入の方はまだしもAWS API経由でまとめ買いサービスを出す事もできるのでましだろうし、My KindleもAPI提供して欲しいものだ。
Kindle化希望リクエスト
Amazon上でKindle版のない紙書籍のページに出現する
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてくださいリンク、Amazon USでは数年前からある機能であり、日本展開時に同じインターフェイスを提供したようだ。従前の紙書籍も販売しているAmazonならではの施策だろう。
このボタンの効果があったかどうかは不明だが、USの体験ではかなり古い書籍で絶版になっていたものでも最近になってからKindle化されたりもしているので、自分のお気に入りの本でKindle版がないものは積極的にリンクを通じたリクエストするのがいいと思う。
Kindle は読書経験へのアクセス権を与えるサービスであって書籍販売ではない、という話
特につい最近になってWIREDがKindleで購入した電子書籍は、実はユーザーのものではない という記事を載せていることもあってこの話題は多少盛り上がっているように見える。 ただし元の英語記事はAmazonからのコメントがアップデートがされている。Amazon 曰く
Account status should not affect any customer’s ability to access their library.
アカウントの状態がライブラリへのアクセスに影響することはないと言っている。アカウント停止されたらログイン出来ないのでどのみちコンテンツにアクセス出来ないんじゃないかと思うが、一方で確かにこの手のアカウント停止で過去の"購入"済みコンテンツが端末にダウンロードされたものまで含めてワイプされて読めなくなるなんて事態が起こるのなら、もっと前に大きな話題になってていいはずだけど、少なくとも私はこの記事が初見である。 ただ過去にAmazonは再販権のない出版社が販売していた書籍を遠隔削除したことはあったので (とは言えこの際は返金が行われている) 、こういう心配が全くないかと言われればそんな事はなく、DRMがある電子書籍はAmazon を始めとした提供者のモラルに頼るしか無いのが辛いところ。Amazonの対顧客のモラルは個人的にはそこそこ信頼しているし、また一方でAmazonのDRMについては削除する方法もよく知られてはいるので、そこは紙書籍にはない様々なメリットと読書体験を享受するための(無いに越したことはないが)リスクと思うことにしている。