ウォルフレン教授のやさしい日本経済
Posted by yoosee on Review at 2006-08-24 23:42 JST1 ウォルフレン教授のやさしい日本経済
(4レビュー)初版発行が2001年なので古い記述も少なくないが、日本経済の特殊性を把握するのには良い本だと思う。「 日本/権力構造の謎」で挫折した人にもお勧め。概要をざっと書く。
一度読めば充分な気もするので、図書館あたりで探して流し読みするのでもいい。ウォルフレンの著作を読んだことが無い人は特に一読して欲しい。しかしこの本が書かれた 2001年からの日本の変化をウォルフレンはどう評価するのだろうか、と言うのも興味があるところ。日本は官僚・銀行・企業が手を組んで「新商業主義」とも言える方式を推進してきた。この方式では銀行・企業の個々の利益は重視されず(この点で既に西洋的資本主義とは根本から異なる)、システムの中で役割を果たすことが重視される。こうした護送船団体制は戦後の復興期には日本経済の再建に有効だったが、現時点では既に時代錯誤になっている。
何故か。まず市場が無限に拡大しない以上、「日本工場」からの輸出の受け皿は既に一杯になっている。また輸出には円高は不利となるため、稼いだ外貨を日本円にする事ができない。こうした外貨はそのまま米国への投資として流れ、日本社会に益をもたらしていない。また販売網や企業団体などの「非関税障壁」が大きいため、安い輸入品も入ってこない。
こうして日本では、稼いだ外貨が国内にまわっていないため、一般市民の生活が改善されない(価格が下がらない)ままになっている。
これを解消するには、日本に蓄積された「富」を「(再利用可能な)資本」として活用できる体制にする必要がある。そのために必要なのは「輸入」による外貨の消費と「住居面積拡大」による国内消費の拡大(狭い住居では「新しいものを買う」モチベーションを得ることが難しい)。
そうした経済活動と共に、政治的に発言するサラリーマン層である、いわゆる欧米での「ブルジョワジー」層を作っていくことが大切。またなによりも、こうした市民層へ利益をもたらさない今の日本と言うシステムについて知ることが必要。