*1  ワープする宇宙―5次元時空の謎を解く

ワープする宇宙―5次元時空の謎を解く よくこんなマニアックな本がヒットしたなと思いつつ、出来の良い長編SFを読んでいる気分で、大変面白く読んだ。

本書は前半から約3分の2以上を素粒子物理史の説明に費やしている。この部分は理論の推移だけでなく、物理学者による発見の経緯やその後の検証実験の様子まできちんと書かれており、読み物としても面白い。ストーリーがニュートン力学から電磁気学や相対性理論を通り、量子力学や標準理論、超ひも理論といった現代の素粒子物理学まで一連の流れとしてえがかれているので、大学等で物理を志す初学者にも全体像を俯瞰するのに良いんじゃなかろうか。

本題である湾曲(ワープ)次元の話は序章と終章で語られている。基本的には他の部分はこの話題を語るための長い前フリであるということもあり、そこまで出てきた現在の素粒子論の課題をうまく収束させる形で自分の理論に持っていっているので、ストーリー立てとしてもなかなかうまいと思うし、内容も興味深い。なにより元素粒子実験屋としては、近くLHCで実証実験が行われると言うのがいい。

ただ数式こそ出てこないものの、一般常識からは遠くかけ離れた素粒子という世界を学術的知識を踏まえて扱っている以上、予備知識が全く無い人が読み解くのは結構大変じゃ無いかなとも思う。まぁ理解が難しい部分(スピンや様々な荷や場などの専門用語)は読み流してしまっても雰囲気は楽しめると思う。

ところで言いがかりなのは承知の上で書くと、日本語でワープと言われるといわゆるスタートレックやスターウォーズで出てくる超光速移動であるとかもしくは瞬間移動であるとかを思い浮かべるわけだけど、英語では「歪める・曲げる」といった意味であり、ここでの Warp もそうした意味で使われている。ほぼ原題どおりではあるんだけど、キャッチーなタイトルではあるね。

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