Winny裁判判決についての所感
Posted by yoosee on News at 2006-12-15 23:42 JST1 「ウィニー」裁判、判決要旨 - asahi.com
ウィニーを開発した金子氏に150万円の有罪判決が下った。 この判決をざっと読むと、「技術に罪は無い」としつつも「犯罪に使われていることが明白(と裁判官は判断している)な状況で開発を続けたこと」に対して罰金刑を課すと言う形になっている。正直言ってこの判決自体にはさほど違和感を覚えないし、社会的影響を考えた上では「ああ罰金刑でしかも150万円程度で収まったか、裁判官も考えてるな」と思ったには思った。恐らくソフトウェアエンジニア以外の人にはむしろ軽いと思える判決かもしれない。
ただ一方、日本はソフトウェア産業が本当に育っていない国であり、そこを強化しようという国策が発せられている国でもある。その観点から見ると、この判決はソフトウェアエンジニアの、それも世界に通用するものを作れるレベルの人たちに「ソフトを作るときには社会的影響を考えないと逮捕される可能性があるよ」と警告を発する物になっている。
当然これは(実際の逮捕の可能性が殆ど無いにしても)開発者のモチベーションを著しく削ぐものだ。そうしたエンジニアは「なんか面白いものを作りたい(その後の始末なんてシラネ)」と言うものがモチベーションの根幹にあろう事を考えると、これが開発を投げ出す致命傷になる可能性もある。
正直言って「日本版情報大航海プロジェクト」云々に百億つぎ込むくらいなら、金子氏のために精鋭弁護団を(もちろん今の弁護団の能力が足りないと言う話では無いが)組んだ方がよほど国益にかなったのではないかと思う。
もちろん今回の判決は「現行法」のなかでの解釈なので、今後に関してはこうした問題が起こらないような法整備をすることで国益に叶う体制を作れる可能性はある。とは言え日本政府がこの手の話に首を突っこんでロクな事になった試しが無いという過去を考えれば望み薄な気もしてしまう。
ちなみに Winny はその匿名性を守るという観点からソースコードが公開されないまま金子氏1人によって開発されたのだが、もし仮にこれがオープンソースで複数の(おそらくは匿名を含む)人間が開発に携わるモデルならばどうなったのだろう。全員が逮捕されるのか、特定のコードを書いた人だけが問題なのか、それともプロジェクトリーダーがまとめて責任をかぶるのか。まして開発者が日本に限らない場合はどうするのだろう。 もちろん今回の判決はそこまで考えたものではないのだろうが。