Amazon.com トップメニューの半分近くがダウンロード販売になっていた
Posted by yoosee on USA at 2011-06-16 12:01 JST1 Amazon.com のデータ・コンテンツ販売は全般的に好調っぽい
いつものように Amazon.com にアクセスした際にふと左側に表示されるメニューが目に入ったのだが、気がつけばトップカテゴリーの16のうち、7つがオンラインコンテンツになっている。いつの間に、と言う感じである。見てみると今年ラウンチしたサービスが幾つもあるので、ここまで増えたのは最近なんだろうけど。- Unlimited Instant Videos は、今年2月から始まった、サブスクリプション型(Amazon Prime連動)のビデオ見放題サービス + 非購読者には個別購入もあり。USだとNetflixと言うサブスクリプション型宅配DVDレンタル業者がオンデマンドの映画見放題は先鞭を付けていて、そちらは今じゃ宅配よりオンライン再生の方が多いとか。
- MP3 は日本でも去年後半くらいから始まってたと思うけど、DRM無しの mp3 楽曲販売。最近は曲は殆どこれで買っている。米国では新曲も殆ど mp3 で出るし、DRM無しでどこでもなんのデバイスでも聴けるのは、特に非iPod/iPhoneユーザとしては非常に快適で安心。加えて最近これが何度でもダウンロード可能になった。
- その下にある Cloud Drive はつい2ヶ月程前にラウンチされたサービス。初期無料 5GB から、有料で (ないしアルバム購入時のキャンペーン等で) サイズ拡大できる Dropbox 的なクラウドストレージ。MP3 の横に記載がある Cloud Player と組み合わせると、スマートフォンやPCなど複数のデバイスで音楽をストリーム再生したりダウンロードも出来る。Amazon.com で買った曲は容量がかからないのは先日発表された iCloud とも一緒。つい最近になって Google もクラウド型音楽ストレージをリリースしている。
- Kindle は言わずと知れた電子書籍。先日にはKindleの書籍売上が紙での販売を上回ったと言うニュースも出ていて絶好調。電子ペーパーのデバイスも広告配信ありで $114 が出たこともあり、最近は街中、スタバ辺りでも読んでる人をよく見かけるようになった。もちろんPCやスマートフォンでも読めるし、既読情報やメモも同期される。Kindleでの書籍購入の快適さは過去記事を参照。
- Appstore for Android はその名の通り Android Market の Amazon 版。これも今年3月リリース。正直これって儲かるモデルなのかなと思いつつも、リリース以降ずっと1日1有料アプリを無料提供しているのでなんだかんだでアクセスはしてる (正確にはTaskerで1日1回定時に自動起動してる)。
- Digital Games & Software は、PC と Mac 向けのソフトウェア販売みたい。これは使ったことが無いけど、かなりいろんなソフトがダウンロードで買えるようだ。
- 最後のAudibleはいわゆるオーディオブック。米国では車の運転があるからか読み書きに難がある人のニーズなのか、オーディオブックの需要は結構高いみたいで、Kindleには無料でテキストの読み上げ機能もあるけどそれでも個別のオーディオブックは売れてるらしい。Audible.com はその最大手だったけど、2008年前半にAmazonに買収されて今に至る。
また上記のサービスの殆どがスマートフォン、特にAndroid対応している。PCだけじゃなくスマートフォンでどこにでも持ち出せるようになったというのも、これらのサービスをAmazon.comが気合を入れて出してきたことの大きな背景だろう。
あと当然こうしたサービスを支えているのはAWSのクラウドインフラなのだろうし、そうした部分を戦略的に突き進めるAmazon.comのビジネスは本当に恐ろしいくらい。
アメリカでこの手のオンラインが流行るのは、一つには国土が広くて物流のコストがバカにならないし時間もかかるというのがあるんだろうけど、とはいえ日本でももう少しこう言う事が広く出来るようになるといいのにな、とは思ってしまう。特に日本国外にいる身としては、海外からも買えれば最高なんだよなあ。
書評: ワープする宇宙 -5次元時空の謎を解く-
Posted by yoosee on Review at 2008-04-24 21:00 JST1 ワープする宇宙―5次元時空の謎を解く
よくこんなマニアックな本がヒットしたなと思いつつ、出来の良い長編SFを読んでいる気分で、大変面白く読んだ。本書は前半から約3分の2以上を素粒子物理史の説明に費やしている。この部分は理論の推移だけでなく、物理学者による発見の経緯やその後の検証実験の様子まできちんと書かれており、読み物としても面白い。ストーリーがニュートン力学から電磁気学や相対性理論を通り、量子力学や標準理論、超ひも理論といった現代の素粒子物理学まで一連の流れとしてえがかれているので、大学等で物理を志す初学者にも全体像を俯瞰するのに良いんじゃなかろうか。
本題である湾曲(ワープ)次元の話は序章と終章で語られている。基本的には他の部分はこの話題を語るための長い前フリであるということもあり、そこまで出てきた現在の素粒子論の課題をうまく収束させる形で自分の理論に持っていっているので、ストーリー立てとしてもなかなかうまいと思うし、内容も興味深い。なにより元素粒子実験屋としては、近くLHCで実証実験が行われると言うのがいい。
ただ数式こそ出てこないものの、一般常識からは遠くかけ離れた素粒子という世界を学術的知識を踏まえて扱っている以上、予備知識が全く無い人が読み解くのは結構大変じゃ無いかなとも思う。まぁ理解が難しい部分(スピンや様々な荷や場などの専門用語)は読み流してしまっても雰囲気は楽しめると思う。
ところで言いがかりなのは承知の上で書くと、日本語でワープと言われるといわゆるスタートレックやスターウォーズで出てくる超光速移動であるとかもしくは瞬間移動であるとかを思い浮かべるわけだけど、英語では「歪める・曲げる」といった意味であり、ここでの Warp もそうした意味で使われている。ほぼ原題どおりではあるんだけど、キャッチーなタイトルではあるね。
アジャイル・レトロスペクティブ -強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き-
Posted by yoosee on Review at 2008-03-17 12:30 JST1 アジャイルレトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き
本書では基本的にアジャイルを知っていること・アジャイル開発の中で活用される事を前提として、イテレーション(アジャイルプロセスでの短期間のプロセス反復)毎の「ふりかえり」をどう行うとより良いチーム作りが出来るかを、具体的な司会進行方法やパターンを用いて説いてる。掲載されている具体的なパターンの例については小野和俊のブログの書名記事等を参考のこと。この「ふりかえり」プロセスでは、開発者同士のノウハウ共有や進捗の管理というプロジェクトマネージメント的な面を持ちつつも、アジャイル宣言でも先頭に書かれている「プロセスやツールより人同士の相互作用を重視する」を実践しており、発言者の自己改革やチーム内感情のマネージメントといった、人間中心のチーム作りが主な内容になっている。「最初に場を設定する」と言った考え方や、発言量のコントロール、満足度の可視化、あまり発言しない人をどう動機付けするか等は、アジャイルに限らず少人数のワークグループをうまく運営するためのノウハウとしても機能すると思う。
ただそれだけに、イテレーション、リリース等のアジャイル用語に関しては、カタカナ語を使うのは仕方がないにしても初出に注訳程度は付けても良かった気がする(用語の定義はなんと124ページにようやく出てくる)。そう思うのも、この本の適用範囲はアジャイルだけじゃないと思ったからなんだけど。
ところで、そもそも何故こうした「ふりかえり」を行うのかと言うと、根底には恐らく「ある事項を真剣に考えている集団の集合知識による意思決定は、その事項に精通した優れた一人の意見より正しい場合が多い」と言う思想があるんじゃなかろうか。なので「ある事項を真剣に考えてもらう」「考えた事項をチームで共有する」「チームメンバーを信頼し、考えを尊重する」といったプロセスが重視され、それをどう「チームの合意としてプロジェクト方針に反映させる」かが鍵となる。「経営の未来」に従業員の未来を見る - アンカテでも語られているように、チームの活動を集約させて成果にするための手段としての「ふりかえり」は、この先きっと重要さを増していくんじゃないだろうか。
名作をポケットに詰め込んで
Posted by yoosee on Gadget at 2007-10-24 22:00 JST1 DS文学全集
ポケットに文学全集、こんなん欲しかった。わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: 「DS文学全集」レビュー遅い遅い、Palm でなら青空文庫が流行ったのはもう5年も前のことだっ。
.... 言ってて悲しくなってきた。なにせ 青空文庫: TEXTの読み方にある Palm 関連サイトは今や3つとも不達なのであり、時の流れを感じるというかなんというか、寂しいもんだ。青空文庫Palmの部屋 は二代目てのり文庫に引き継がれているのが救いではある。
かわって最近元気なのは W-ZERO3 をはじめとする Windows Mobile 端末だろう。
- 窓の杜 - 【NEWS】W-ZERO3で“青空文庫”作品を直接ダウンロードできる「PocketSkyView」
- ウィルコムファン W-ZERO3: 縦表示でも句読点が見やすくきまる青空文庫ビューア/青空子猫
- UKAozora - 青空文庫クライアント&ビューア
もちろん今回これが何百万台と普及していて子供も使える DS で出たことの意義や、DSソフトとしてあらすじが付いたりUIが良かったりBGMが流れたりと言うアドバンテージもあることは分かっていて、むしろ「時代がやっと俺に追いついたな」と主張していきたい。電子書籍は現状のデバイスでももっと普及していいはずだ。携帯小説というジャンルもあるらしいので、思ったより普及しているのかもしれないけど。
ちなみに『DS文学全集』開発スタッフインタビューでも絶賛されているセメント樽の中の手紙はごく短いので、私も是非一読をお勧めしたい。
ところで今回、任天堂は青空文庫の提携の中で、青空文庫に無かった書籍で任天堂が電子化したものは青空文庫へ提供する、と言う体制を取ったそうで素晴らしい事だ。ここは是非、著作権保護期間延長に反対する立場にも付いてほしいなと思う。
技術書ってそんなに買ってますか?
Posted by yoosee on Clip at 2007-07-30 22:00 JST1 SEって、めっちゃ勉強家だよね?/Tech総研
SEさんといえば本好き。それも一般の人からすれば「高っ!!」と声を出すような技術書をポンポン買って、やたらと机にズラズラ並べてる。SEって、めっちゃ勉強家だよね?/Tech総研いつも疑問なんだけど、みんなそんなに書籍って買ってるんだろうか? 私は技術書の類、特にリファレンス系の書籍はここ数年殆んど自分では買ってない。会社で買っているものもあるにはあるが、紙の書籍はそもそも検索が出来ないので、リファレンスとして使うには不便さを感じる。言語系なら大抵はWeb上にリファレンスがある上、実際のコードもコード検索サイトが充実してきている。アプリケーションの解説系書籍に関しては Debian を常用しているとインストールと初期設定が飛ばせるので、その時点で価値半減というのもある。
レシピブック的なものや "Effective 〜" シリーズのように知見を広げるもの、読みもの的な書籍ならばそれなりに読んでいるけど、そもそもこれらは読むために買っているもので、読まずに積んでおくだけと言う状況にはならない。そういう意味でも買うだけで読まないリファレンス本って本当に買う価値があるんだろうかと思ってしまう。まぁそうしたニーズがあって売れている分には、無駄だと主張するのも野暮な話なのかもしれないけど。
おとなの折り紙を折ろう
Posted by yoosee on Review at 2007-05-14 22:00 JST1 おとなのおりがみ
最近マイミクの mixi 日記でも ターバン野口が話題になっていたけど、そういえばしばらく前に購入した おとなのおりがみ の通りに折ってみたお札の写真があった事を思い出し、公開してみる。 他にも千円、伍千円、壱万円札を使ったへんな折り紙がたくさんあり、難しいと思いきや手順通りに頑張って折ればなんとか形になってくれて面白い。一番難しいのは作成に八万円必要な食い道楽のカニかもしれない。2 おとなのおりがみ
そんなわけで以下、うちで折ったお札折り紙をご紹介。全部「おとなのおりがみ」に載ってる奴である。 家政婦は簡単なわりになかなか味がある。カネゴンは財布に入れておくと金運が良くなるなんてことが書いてあったので、実は今も入っているのです。ハリーポッターと不死鳥の騎士団 上・下
Posted by yoosee on Review at 2007-04-22 12:00 JST1 ハリーポッター5巻 不死鳥の騎士団を読了
2,3,4月と週数冊のペースで本を読んでいるが、書評を書く所まで殆んどたどり着けていない。このまま書かずに忘れるのもなんなので、今日読んだ本 ハリーポッターと不死鳥の騎士団 の雑感を。昔からのファンタジー読みとしては色々といいたいこともあるし、あまりにステレオタイプな構造を作りすぎだと思わなくもないが、分かりやすさを考えれば仕方がない部分ではある。お話として素直に評価すれば十分面白い。毎回ながら細かい伏線を回収してくれないのは気になるのだが、キャラクター描写が生き生きとしているのは素晴らしい。シリーズを通して読んでいる人なら 4/5 点。まぁそもそもが通して読まないと意味不明な話ではある。
など言いつつも買うほどの情熱は全く持てないので図書館で借りて読んでいる。6巻も一応予約してみるが、予約待ちが150件くらいあるので借りれるのはいつになるだろう。
天才数学者、株にハマる 数字オンチのための投資の考え方
Posted by yoosee on Review at 2007-03-01 22:00 JST1 天才数学者、株にハマる - 数字オンチのための 投資の考え方
(22レビュー)2年以上前の本だが、今読んでも名著だと思う。特に「理系で株をこれから始めようという初心者」「数字に疎く株の動きの裏付けを知らずに取引をしている人」には是非読むべきだろう。市場というものがどういう仕組みで動くかを、簡単な数学と市場に関わる人間心理や共有知識といった思考実験で解き明かしている。
ところで本書の内容から得られる事を非常に端的に書くと、あまり色気が無い話になってしまう。
- ファンダメンタル分析やテクニカル分析なんて実際には役に立たない。
- 株価の振舞は(市場成長率の分だけ全体としては上昇傾向の)ランダムウォーク
- ランダムウォークを前提とするならば、資産投資ではリスク分散が最重要
- ファンダメンタル分析やテクニカル分析等の効果を考えるときには「平均◯◯銘柄」といったインデックス以上の効果があるかどうかを考えなければいけない。そして実際に比較した場合、インデックスを越える収益をコンスタントに出しつづける事は非常に難しい
- 過去の経緯・分析は、過去を説明できたとしても未来の市場を予測するものではない。仮に今の株価が過去から現時点までの全ての企業情報を含むと考えた場合、未来の株価は完全にランダムな事象になる
- 株式市場の動きに関しては、数学的にはランダムウォークないしカオスといった「現実的な未来予測が不可能な問題」となりそうだが、現実には情報伝達の遅延(例えばインサイダー情報と公開情報の時間差)、心理的なフィードバックによる動きなどはある程度の確率で予想できる可能性がある
- 一方で市場の持つフィードバック機構を利用することにより、情報操作や投資による市場操作は現実として可能である。有名アナリストの分析が「当たる」のも、彼らの発言自体が市場の動きに影響を与えているからだと考えることが出来る
- そうした特別な情報の入手や市場操作が出来ない普通の投資家の場合、負の相関を持つ銘柄での分散投資や、オプション・ファンド・デリバティブの適切な利用によって取引リスクを軽減することが出来る。要は「ひとつのカゴに全ての卵を入れる」のを避ける
- 単一銘柄に過剰な投資はしない
- リスクをカバーするポートフォリオをつくる
アマゾンアフェリエイトの料率変更
Posted by yoosee on Review at 2007-01-18 22:00 JST1 Amazon.co.jp アフェリエイトプログラムの紹介料率変更
今更なのだが、Amazon アフェリエイトの紹介料プランが 2007年1月から変更になっていた。販売数と料率の割合が変わっていて、かつパフォーマンスプランの商品カウント方法が四半期合計から各月合計に変更されたようだ。また、個別商品リンクによるプレミアムが無くなった。基本的には変更前とトントンになるようだが、以前に四半期売上数が11〜30点だった人は割を食うようだ。
3ヶ月で11〜30点だった人は従来だと3.25%の料率だったんですが、それが3%に減るわけで、このあたりのアソシエイトメンバーってむちゃくちゃ多いんじゃないかと思います。碧き流星: 【Amazon】パフォーマンスプランの料率が変わるまた 備忘録ことのはインフォーマル | Amazonの紹介料率変更によると、個別リンクによるプレミア紹介料が発生している商品の割合が 25% を越えていた人は、多くの場合でマイナスになるらしい。うちの場合は微妙なラインかな…。
4泳法がきれいに泳げるようになる!
Posted by yoosee on Review at 2006-11-18 23:42 JST1 4泳法がきれいに泳げるようになる!
(2レビュー)プールで泳いでいると、どうにも泳ぎかたがおかしい人をよく見掛ける。見るとひざが曲がっていたり腕の回し方がおかしかったりと、きちんとしたフォームで泳げていない人が多い。競技じゃないので別に速く泳ぐ必要は無いのだけど、折角泳ぐならば正しいフォームで泳いだ方が体も鍛えられやすいし、なにより気持ちいい。
そんな「一応泳げるけどきちんと泳げている自信が無い」と言う人にお薦めなのがこの本。正しい水への浮き方から、クロール・背泳ぎ・平泳ぎ・バタフライの泳ぎかたを Step-by-Step の丁寧な図付きで解説している。水を掴んで水面近くを滑るように泳ぐ気持ちよさを味わってみたいと言う人にお薦め。
邪魅の雫 / 京極夏彦
Posted by yoosee on Review at 2006-09-30 23:42 JST1 「邪魅の雫 / 京極夏彦」 読了
京極堂シリーズとしてはひさしぶりに面白かった。いつもとは趣向も手法も違うので、好みは分かれるかもしれないし、私も最後の京極堂によるいつもの謎解きに物足りなさは感じたが、ストーリーの仕立てはなかなかよく出来ている。ただ今回は主要登場人物があまり活躍しない形になっており、私も木場や榎木津あたりはもっと活躍してもいい気がした(もしかして別の本のストーリーが同時進行中と言う時間設定?)。犯人が途中でうっすら分かるのはまぁ、京極の本って他もそういうの少なくないし、別に犯人探しがテーマでは無いのでいいんじゃなかろうか。
ああそれと、書籍に今回ついてきた「京極夏彦全作品解説書」には、各小説の事件がどういった前後関係や並列で起きていたかが一目で分かる年表が付いていてファンにはちょっとうれしいおまけになっている。しかしなんで京極氏はいつも指あきグローブをしているんだろうか…。
2 読んでおくべき京極堂シリーズ
(87レビュー) (21レビュー) (51レビュー)なお、京極堂シリーズは個人的な好みでは「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」「絡新婦の理」と、今回の邪魅くらいを読んでおけばいい気がする。私は他も全部読んでるけど、あえて読まなくてもいいかな... ま、読んだ方が人間関係なんかは分かるようになって楽しめるのでお好みで。しかし塗仏は許せん。
ウォルフレン教授のやさしい日本経済
Posted by yoosee on Review at 2006-08-24 23:42 JST1 ウォルフレン教授のやさしい日本経済
(4レビュー)初版発行が2001年なので古い記述も少なくないが、日本経済の特殊性を把握するのには良い本だと思う。「 日本/権力構造の謎」で挫折した人にもお勧め。概要をざっと書く。
日本は官僚・銀行・企業が手を組んで「新商業主義」とも言える方式を推進してきた。この方式では銀行・企業の個々の利益は重視されず(この点で既に西洋的資本主義とは根本から異なる)、システムの中で役割を果たすことが重視される。こうした護送船団体制は戦後の復興期には日本経済の再建に有効だったが、現時点では既に時代錯誤になっている。一度読めば充分な気もするので、図書館あたりで探して流し読みするのでもいい。ウォルフレンの著作を読んだことが無い人は特に一読して欲しい。しかしこの本が書かれた 2001年からの日本の変化をウォルフレンはどう評価するのだろうか、と言うのも興味があるところ。
何故か。まず市場が無限に拡大しない以上、「日本工場」からの輸出の受け皿は既に一杯になっている。また輸出には円高は不利となるため、稼いだ外貨を日本円にする事ができない。こうした外貨はそのまま米国への投資として流れ、日本社会に益をもたらしていない。また販売網や企業団体などの「非関税障壁」が大きいため、安い輸入品も入ってこない。
こうして日本では、稼いだ外貨が国内にまわっていないため、一般市民の生活が改善されない(価格が下がらない)ままになっている。
これを解消するには、日本に蓄積された「富」を「(再利用可能な)資本」として活用できる体制にする必要がある。そのために必要なのは「輸入」による外貨の消費と「住居面積拡大」による国内消費の拡大(狭い住居では「新しいものを買う」モチベーションを得ることが難しい)。
そうした経済活動と共に、政治的に発言するサラリーマン層である、いわゆる欧米での「ブルジョワジー」層を作っていくことが大切。またなによりも、こうした市民層へ利益をもたらさない今の日本と言うシステムについて知ることが必要。
ウー・ウェンの北京小麦粉料理
Posted by yoosee on Review at 2006-08-04 23:42 JST1 ウー・ウェンの北京小麦粉料理
(16レビュー)今回の水餃子作りに参考にしたのは「ウー・ウェンの北京小麦粉料理」と言う本。水餃子や坦々麺、包頭など、60種類以上の「小麦粉」料理が、手順を説明する大量の写真と共に掲載されている。読んだら作ってみたくなること請け合いの良書。実際レシピ通りに水餃子を作ってみたが、本で読むよりは難しかったものの、皮がモチモチで餡がジューシィな美味しい水餃子ができて至極満足。これのために大理石のプレートを買ったけど、近所のLIFEで 1,600円くらい。
そう言えば各ページ右下に何か小さな写真が付いていると思ったら、「餃子の包み方パラパラ漫画」だった。そんな遊びがあるのも面白い。ウー・ウェンさんの著書は他にも結構あるようなので買ってみたい。
ディアスポラ - グレッグ・イーガン著
Posted by yoosee on Review at 2006-04-23 23:42 JST1 ディアスポラ 読了
(6レビュー)もう何と言っていいのか分からないが、個人的には人生のベスト 3 に入る SF 作品と断言できる。冒頭の電子生命体"孤児"が誕生し自我に目覚めるプロセスといい、5+1次元生物の生態といい、「長炉」の描写といい、はたまたブラックホール量子物理理論の展開から高次元宇宙の旅といい、とても人が想像だけで作り出したとは思えないほどに生き生きとした描写は、その世界を覗き込んでいるような感すら覚える。難解ながら具体的な描写で描かれたその世界のイメージが自分の脳内に構築されていくと言う読感は SF 読みの正に醍醐味そのものであり、脳が汗をかく(ほど働いている)と言う快感を得られる本でもある。
29世紀の電子化された人類が住む地球に始まり、何兆もの宇宙を越えて数百億年の時間を旅する姿はあまりに壮大で涙が出そうになるほど。確かにハードSFの骨肉の部分をそのまま表に晒し出しているこの作品は全く持って万民向けではないが、SF好きならば絶対に読んでおくべき本のひとつではなかろうか。
ただ物理学という視点から真面目に読むと、物質宇宙創造のストーリーが「偶然に反物質より物質が多かった」と言う安易な根拠だったり、数百億年の時を越えた宇宙の物質が陽子崩壊してないのはいいのかなと思ったり(そもそもこの物語の物理体系が陽子崩壊を予言しているか不明、且つ隣接宇宙間では時間軸は非連続かもしれないが。そう考えると情報の寿命は陽子寿命より長く成り得るのか…)、超紐の論文から着想を得ている高次元極小ワームホールの量子論がクォーク・レプトンのレベルをあまり説明してない(カラー荷の生じる理由や重力生成原理などが見当たらないが見落としただけ? あと高次宇宙の素粒子では次元がどう折り畳まれているんだろう? 無限次元の場合は?)など、稚拙ながら量子力学を学んだ身からすると多少気になる点もあるが、そう言う細部を突っつきたくなる衝動自体がこの本にあてられた自己の防衛本能であるかも知れず、発刊時点での最新物理学をきちんと踏まえて論理的に構築された世界はそうした多少の矛盾点を加味してもその価値は全く衰えることがない。
たまに本を読んでいると「これくらいの話なら自分でも書けそうだ(もちろん現実に書けるわけではない)」と思うことがあったりするが、この本を自分が書けそうだ等とは中性子の欠片ほども思えないのである。